あなたと同じような感情で誰かを愛せたなら

 サザンの「東京VICTORY」はいい曲だが苦手だ。2年前に好きだった男性が、CMで流れるたびに意気揚々と歌っていたのを思い出すから。

 思い出の音楽は山ほどあるが、一緒に思い出す出来事のほとんどが恋愛に関わる辛い・悲しいものなので、わたしの原動力のいかに大部分がそれらで構成されているのかがよくわかる。

 せっかくなので振り返って、お焚き上げ記事にしようと思う。

 

①ドミノ/COLTEMONIKHA

COLTEMONIKHA2

COLTEMONIKHA2

  • アーティスト:COLTEMONIKHA
  • 発売日: 2007/09/26
  • メディア: CD
 

  高校時代一度だけバンドを組んだことがある。そのライブに隣の男子校で当時仲の良かった知り合いの男の子を何人か呼んだところ、友人を呼んできてくれ、その中に1人馬の合う男の子がいた。それをきっかけに連絡をとりあうようになり、ある時、人生で初の告白を受けることとなり、当然OKしたのだが、1ヶ月後、彼から「ごめんやっぱり付き合えない」と謎の三行半メールを突きつけられた。その時ウォークマンからドンシャリで聴いていたのがこれ。

 わけがわからず腹が立ち、同じグループの友達にさんざん文句を言ったがどうにもならず、自分の品格を下げただけのように思えた。ばかばかしくなり、こんなことしても自分にとっては損しかないと思い至った。

 そこで、当時彼に「勝訴ストリップ」を貸しており、返却された際に裏面をめちゃくちゃに傷付けられて人伝に返ってきたので、初回限定盤のピンクケースごと新品で買って返せと最後に要求した。苦労してくれたそうで、つるつるの新品が手元に戻ってきたときの、いわゆるところの「ざまぁ」の気持ちが忘れられない。共通の友人には苦笑いされた。

 彼はその後某優秀な大学を出、一流商社に就職、美人と結婚し一児をもうけているそうで、本来的には、わたしなんかと同じ世界線にいるような人じゃなかったのだと思う。わたしなんかに捕まって人生無駄にしなくてよかったね。

 

②this love will not be successful/baker

 就活前の大学3年の冬、付き合っていた彼に前触れもなく「距離を置きたい」と言われ、帰路の私鉄の中で1時間半号泣しながら、これを聴いていた。わたしにとってはbaker氏がボカロの入口で、「カナリア」や「サウンド」は起源。

 彼のことは好きだったが、これから辛くなるであろう時期に急に独りにされたので怨んだ。この怨み晴らさでおくべきかと思い、就活終了後によりを戻そうと言われ、口約束として戻すことにしたが、夏は友人とフジロック、グアム旅行等々とバイトに励み、クリスマスやバレンタインのイベントと夜中の電話はすべて無視した。実際就活中は、ポジティブみに溢れていたし、大学の友人と逐一連絡をとりあったり飲みに行っていたので、あまり辛くなかった。つまり結果的に彼がいなくても大丈夫だったのだ。

 そんなこともあって就職した直後の夏、仕事に慣れるので精一杯の中、仕方ないのでまだ進路の決まらない彼に別れたいとLINEで送った。直接話す心の余裕がなかったためLINEにしてみたが、納得してくれず困ったので、共通の知り合いに家を貸してもらい、話し合いの場にいてくれるよう頼んだ。よく引き受けてくれたなと思う。わたしはなんとなくお茶を濁せるように、水まんじゅうを買って行き、約10分程度の調停の結果、なんとか円満別離とあい成った。その後、知り合いの家から程近い遊園地に3人で行った。当時高所恐怖症だったので、天気雨の中2人がバイキングに乗るのを1人で眺めていた。安っぽいMVのような話ですが盛っていません。

 

③ブルーデイズ/絢香

ブルーデイズ

ブルーデイズ

  • 発売日: 2007/06/06
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 2006年当時は観ていなかったが「サプリ」という亀梨和也伊藤美咲主演のドラマがあり、なにも考えずに観られるお仕事系ドラマが観たいと思い、この頃ちょうど毎日1話ずつネットで観ていた。その挿入歌。

 入社して2年めごろ、職場の上司のノリもあって毎週のように飲み会に明け暮れていた。学生のときから酒は強くないが飲み会は好きなので、その日もご多分に漏れず、土曜の朝3時まで飲み明かし歌い明かしたが、半端な時間に解散になって急に放り出された。

 その何人かいたメンバーの中にいい感じの人がいて、諸事情あって一緒にはなれなかったのだが、1人でタクシーに乗りながら、そもそも夜中に放られたのに普通に帰らせて連絡もよこさないってなんだよ、とモヤモヤしつつ、タク代節約のために最寄駅でおろしてもらい、酔い覚ましがてら駅から歩いて帰っていた。帰り道のなんともいえないむなしさに、たまたまシャッフルでふりかかってきたこの曲の染みたこと。

 でも大変に好きな人だったので、もうこんなに人を好きになることないだろうなあ、と別れた時に号泣した。で、久しぶりに近い水準くらい好きになった男性がとんでもない根なし野郎だったので、ほんとうに見る目がないのだと思う。悲しい。

 

④東京VICTORY/サザンオールスターズ

東京VICTORY(通常盤)

東京VICTORY(通常盤)

 

 冒頭のやつ。

 ゴルフやLDHが好きとかいう、わたしの人生と何一つ属性が被らない人だったが、一緒にいて楽しかったし、転勤の時は個人的にプレゼントをくれたりお祝いをしてくれたりしたし、なにより第一印象からなんとなく好きだったので、告白したらスルーされ、返事も返ってこなかった。しかもそれを悪びれなかった。

 なんで付き合ってくれなかったのかとは思わないが、真正面から真面目にコミュニケーションをとろうと思った相手に真っ向からスルーされると、それを指摘してやろうという気にもならないというか、暖簾に腕押しというか、「ええ加減にせえよ」が「もうええわ」になるんだということを学んだ。

 告白して返事が返ってこないことなど想定していなかったので、ショックのあまり、この失恋の原因ではなく、彼の人間性がこじれた原因を何日も考え続けた。答え合わせすることはないが、噂を聞いている限りではなんとなく正解しているもよう。悠長にCMにあわせて歌ってる場合じゃないのよ、あなた。人のこと言えませんけどね。

 

 最近はそもそも出会いもなく、揺さぶられるような辛い出来事があまりないので、いい曲を穏やかな気持ちで聴けていい。苦い思い出に結びついて聴けない曲が増えるよりはいいかもしれない。そのかわりに死んでいるくらい、なにも起こらないつまらない人生になったけど。

 30歳になるに向かってあと2年弱、向かうところ一寸先以降一生闇。とりあえず、思い出だけでもしっかり成仏しておくれ。南無三。