長編映画のような夢を見て

今週のお題「2019年買ってよかったもの」:軟骨ピアス(ヘリックス )

 

 癖というか習性のようなもので、やたらと偶数を避けてなににしても奇数を選びたくなる。偶数ならうまくいかないし、奇数ならそれだけで強気になれる。きっかけはよく覚えていないが、母親の謎の「なにごとも割り切れちゃうなんてつまらないわよね」のひとことだったようにも思う。幼少期から母親の影響は絶大だ。

 誕生日の日は偶数だけど、月と足したら奇数だからよしとしよう。社員番号は奇数、今の会社の内線番号も奇数。メインのクレジットカード番号も奇数。携帯番号も奇数。部屋番号は偶数なので、次の引っ越しで奇数の部屋に住みたい。数字を扱う仕事のときは、常に奇数を意識していた。しかし営業の仕事から離れて1年とちょっと、最近はあまり普段数字を意識することはなかった。

 そこで最近久しぶりに意識した数字が、ピアスだ。もともと左右のロブにひとつずつ開いていたが、もう10年来の憧れで、この歳でようやっと、ひとつだけ、ヘリックスに穴を開けた。

 きっかけはいろいろあった。東京事変のDynamite outのツアーDVDが死ぬほど好きで当時すり切れるほど観て、林檎が左(か右か忘れた)のヘリックス からロブのあたりまで垂れ下がるロングピアスをつけて「車屋さん」を熱唱していたのを鮮明に覚えていたり、いま推しているミュージシャンが片耳だけピアスしていたり、バチェラーの岡田ゆり子のヘリックスについたダイヤかジルコンの一粒ピアスが格好良かったりしたが、よくよく考えたら、最終的な結論は「ピアスの穴を奇数にしたかった」なのではないか、と思う。

 8000円の手術代(麻酔・抗生剤・消毒液付き)と500円程度のステンレスバーベルで、10分足らずでめでたく、わたしの右耳のヘリックス にあっさり風穴が空いた。しかしロブを開けたときよりも膿みやすく、もう5ヶ月ほど経ちセカンドピアスでラブレットに付け替えたが、まだ化膿止めが手放せない。会社の人には内緒にしているが、髪型のおかげでうっかりしなければバレることもないだろう。

 ピアスの個数が奇数になり、誰も喜びはしないが、なんというか胸がすいた。長年の憧れや溜まっていたフラストレーションの発散や、たいしたことでもないが人に内緒にできる秘密が増えたことや、欲しかった・叶えたかったことが、こんなことでいくつも叶った。これより高い買い物は今年も去年もしたが、一番買ってよかったものは、ぶっちぎりこれだと本気で思う。

 風穴開けられて変わるようなドラマチックな人生じゃないので、だからこそ、そろそろ憧れのひとつやふたつを、曲がりなりにもちゃんと叶えていこう。欲しいものをちゃんと欲しがろう。わたしたちがおかしくならずに生きていくために、これくらいは必要経費ということでお願いしたい。